書籍出版への思い

『奇跡の朗読教室


 ~人生を変えた21の話~』

小さな朗読教室の教室生の様々な出来事を通して人生や生活を変えた出来事を、21のストーリーにしました。小さな笑いや涙、感動がギュッと一つに詰まった一冊です。

フリーアナウンサーとして長年、ナレーター、声優、演劇、話し方の講演など、およそ「声」にまつわるあらゆる仕事をしてきた私ですが、2011年3月11日を境に、大きく揺らぐこととなりました。
それまで人の役に立つ仕事だと思い込んでいた私のスキルが、こういう事態の下では何の役にも立たないことに気づき、衝撃を受けたのです。それでも、自分の中から湧き上がってくる「何とかして人々を元気付けたい、喜ばせたい」と言う思いが強く、私にできる事は何かと考えたとき、やはり「声」、そして「語ること」しかありませんでした。
「声を通して人に元気になってもらいたい。朗読教室を開こう。それも、本をただ声に出して読むだけのありきたりの朗読教室ではなく、来るだけでポジティブになれて、安心感と楽しさに満ち溢れる、そんな場所を作りたい」そう強く心に決めたのです。

しかし、初めからうまくいくわけではありません。最初は全く生徒が集まりませんでした。
他の教室はどうだろうと考え30カ所以上の朗読教室を回ってみましたが、どこも活気がなく、全然面白くない‥‥。
私は、その真逆をやろうと決心しました。若い人がたくさんいて活気のある楽しい朗読教室を。クラブ活動のような朗読教室を!
そうしたところ、どんどん人が集まるようになったのです。

朗読という世界に身を置き、作品に励まされ、新しい気づきが生まれる。言葉の力に支えられ、心と体に届く言葉の響きや、そこから生み出される不思議なエネルギーに元気を与えられる。そして、同じ志のもとに集う仲間たちとの間に絆が生まれる。
長年にわたり声に関する仕事に携わってきた私自身、朗読にこんなにも大きく人生を変える力があり、人を楽しませたり、感動させたりできると思ってもいませんでした。

教室で生まれる様々なドラマやエピソード。それを多くの方に伝えたいと、こうして書籍のかたちで世に出すことができました。
これまでスポットライトを浴びたことがない方も、朗読によって主役になることができる。
その方の人生を変えるほどの力を、ぜひそれぞれのエピソードとともに読んでみてください。

そして、NHKドラマのモデル教室となりました

2017年9月よりNHKで放送されたドラマ「この声をきみに」は、ソフィアの森朗読教室がモデルとなっています。斉藤ゆき子が朗読指導も担当しました。

朗読教室を立ち上げてから6年、NHKのプロデューサーから連絡がありました。
朗読教室を舞台にしたテレビドラマの企画があり全国の朗読教室をリサーチしているとのことでした。「ソフィアの森」にも見学にいらっしゃり、まさしく「大人の部活動」である私たちの教室がドラマのモデルとなることが決まったのです。
斉藤ゆき子は、ドラマ内の朗読指導も担当することになりました。
ドラマの最後の発表会のシーンでは、他教室の先生としてちらっと出演もしています。

麻生久美子さんと竹ノ内豊さんが主演したそのドラマは大ヒットし、ギャラクシー賞※を受賞。「ソフィアの森」にも問い合わせが殺到し、月1回のワークショップを立ち上げると北海道から四国まで、全国の人々が集まるようになりました。
朗読教室のすばらしさを全国の方に知っていただくきっかけになったこのドラマとのご縁には、心から感謝しています。

※DVD付録特典のドラマエピソードは、斉藤ゆき子が執筆しました。

※ギャラクシー賞:放送批評懇談会が日本の放送文化の質的な向上を願い、優秀番組・個人・団体を顕彰する賞